OUTPATIENT 専門外来
腫瘍外来
腫瘍外来では、免疫療法・化学療法など薬物療法と外科手術後の術後患者のフォロー、皮膚T細胞性リンパ腫の治療を中心に1日約100名の患者を診察しております。薬物療法は保険適用である標準治療の免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬に加えて、医師主導治験、先進医療、企業治験など、新規治療法の開発を積極的に行なっております。中でも東北大学で独自に開発した薬剤の臨床応用を目指した医師主導治験では、抗PD-1抗体の耐性を解除するという画期的な薬剤のメラノーマへの応用に成功し、今後の薬事承認を目指して研究を進めております。加えて、進行期の皮膚T細胞性リンパ腫の治療も外来化学療法として導入しており、最新の薬剤による治療を行なっております。
実際、これら薬物療法の患者数は根治切除不能メラノーマ・非メラノーマ皮膚がん、進行期皮膚T細胞性リンパ腫に加えて、再発予防のための術後補助療法などの導入を他大学に先駆けて行なっております。また、サイバーナイフなど最新の放射線治療と連携し、新規放射免疫療法の確立を目指しております。このように全国的にも症例数が多い腫瘍外来からは、腫瘍関連の基礎研究論文・臨床研究論文が多数報告しております(研究欄参照)。また、皮膚がんを中心とした手術件数は年間に400を超えており、執刀件数は国内有数の施設です。研修時代から執刀医としての機会にも恵まれていることに加えて、自ら腫瘍外来でその経過をフォローすることができます。さらに、緩和科との連携のもと、期待できる治療がなくなった患者に対する終末医療の導入も行なっております。このように、腫瘍外来では外科的手技から進行期の免疫・化学療法、さらに放射線治療を加えた放射免疫療法などの集学的治療治療を行うことに加えて、終末期医療の導入など、癌患者に寄り添うことのできる外来です。
脱毛症外来
脱毛症外来は脱毛を来す疾患、特に円形脱毛症を主な対象とした診療を行っており、宮城県内全域のみならず、他県からの患者さんも数多く来院されています。現在通院中の患者さんは500名近くにのぼり、日本国内でも有数の脱毛症専門外来です。円形脱毛症はその病期と病勢によって最適な治療方法を決定します。急性期で、急激に頭髪その他の毛の脱毛が広範囲に生じている例では短期入院での治療も行っています。外来での治療については、重症の患者さんに使用は限定されますが、ここ数年、JAK阻害薬の登場によって従来なかなか良い治療法がなかった方にも新しい治療選択肢がご提案できるようになり、治療的に大きな進歩が見られている領域です。
さらなる病態の理解とそれに基づいた新しい治療法の開発を目指し、患者さんから頂いた脱毛部の皮膚や血液のサンプルを用いた病態の基礎的研究、またマウスモデルを用いた病態の基礎研究も活発に行っております。脱毛症はそれ自体が命に関わる疾患ではないものの、精神的な負荷を始めとして生活の質に重大な影響を及ぼす疾患です。同時に、極めて長期に慢性に経過しうる疾患でもあり、地域の皮膚科の先生方とも緊密に連携しながらより良い脱毛症診療を目指しています。
乾癬外来
乾癬は、慢性炎症性皮膚疾患であり非常に生活の質(QOL)が低下する疾患群のひとつです。患者さんそれぞれの将来に向き合うために、乾癬外来では「いかにして上手に乾癬と付き合い、コントロールするか」を共に考えていきます。そのためには、乾癬のタイプ、合併症や既往症、生活習慣や職業などを含めた患者さんのライフスタイルに合わせて、それぞれが継続できる治療方法を選択していくことが重要です。
当外来では、生物学的製剤治療を積極的に行っており、幅広い年代の方への投与経験があります。現在は、基本的な外用治療をベースとして各種免疫抑制治療を併用することが多く、TNFα、IL-17、IL-23の各抗体製剤に加え、JAK阻害薬やPDE4阻害薬、TYK2阻害薬など、さらに治療のバリエーションが増えています。それぞれの治療の特徴を生かして、より良い治療法を選択していくことになりますが、乾癬性関節炎を合併している場合は関節変形のリスクが高いため特に積極的な治療介入が必要です。
さらに最近では、乾癬患者は若年層からメタボリックシンドロームの合併率が健常群と比較して有意に高いことが明らかになり、乾癬は皮膚のみならず全身の炎症を惹起するリスク因子として認識されるようになりました。特に致命的となる心血管イベントとの関連が重要視されていることから、早期の治療介入による病勢のコントロールは非常に効果的と考えています。
また、当外来では掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎といった類縁疾患に関しても生物学的製剤治療を行っています。どちらも治療抵抗性の傾向があり、治療に難渋する症例も少なくないですが、日常生活指導も含めて患者さんと向き合うことが大切と考えています。
いずれも慢性に経過する疾患でありますが、皮疹を忘れて過ごせる日常生活を目指して乾癬外来の診療を行っています。
アトピー性皮膚炎外来
アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹を繰り返す慢性の皮膚疾患で、遺伝的素因にさまざまな環境要因(悪化因子)が加わって発症します。強い痒みや整容上の問題から患者さんの生活の質を大きく損ねうる疾患です。小児の疾患と考えられがちですが、近年は思春期以後に増悪してくる例や、成人発症例が増えてきています。治療は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の除去」の3つをバランス良く行うことが大切です。アトピー性皮膚炎外来では、血液検査による網羅的なアレルギー検査、生活習慣に関する問診票調査、心理検査を実施し、悪化因子の検索を行い、対策も含めた生活指導箋を患者さんごとに作成しています。適切なスキンケアとして保湿剤の使用だけでなく、入浴法や体の洗い方を見直すことも重要ですので、合わせて指導を行っています。
薬物療法の主体は外用療法ですが、重要なのは適切な塗布量と正しい塗布方法で実施することです。当外来では、外用療法に精通した看護師が、実際に患者さんに外用薬を塗布しながら外用方法を説明します。再診時には、自宅での外用が問題なくできたかどうかを確認しています。基本治療で症状が十分に改善しない患者さんには、経口免疫抑制薬や分子標的製剤による治療を行っています。また、新薬の治験も実施しています。
アトピー性皮膚炎を短期間で完治させることは困難ですが、適切な治療を行うことで、皮疹や瘙痒がほとんどなく、治療もあまり必要としない状態を目指すことは十分可能です。当外来では、患者さんごとの症状や生活状況、希望に合わせた治療を心がけて診療に当たっています。一方で現在でもアトピー性皮膚炎の根本的な原因はわかっておらず、病態解明、新規治療法の開発を目指して基礎・臨床研究を行っています。患者さん一人一人に向き合いながら、未解決の医学的課題にも取り組める、やりがいのある外来です。
白斑外来
白斑外来は毎週木曜日の午後に診療を行っています。当外来では、主に尋常性白斑の患者さんの診療を行っています。尋常性白斑は、皮膚の色素を作る細胞 (メラノサイト) が後天的に消失し、皮膚に脱色素斑が現れる疾患です。この疾患は全人口の0.5~1%に発症し、小児から高齢者まで幅広い年齢層に見られます。尋常性白斑は難治性の皮膚疾患であり、患者さんは容姿の変化から精神的な苦痛を感じることが多いです。
当科の白斑外来には、毎週30~50人程度の患者さんが受診しています。治療法としては、以下のものがあります。
- 外用療法
- ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、活性型ビタミンD3軟膏などを使用します。
- 紫外線療法
- エキシマライト、ナローバンドUVB、ターゲット型ナローバンドUVBを使い分けて治療します。
- 全身療法
- 病勢が強い患者さんには、高用量のステロイドを点滴で投与するステロイドセミパルス療法を実施します。
- 手術療法
- 直径1mmの皮膚片を移植するミニグラフト術や、皮膚片を細断してペースト状にしたものを移植するスマッシュグラフト術を行っています。
また、白斑領域は研究の盛んな領域であり、新規治療法の開発も著しいです。最近では、JAK阻害薬などの新薬が登場し、当外来でも複数の臨床試験を実施しています。また当外来では、ビタミンDの内服がロドデノールという化粧品含有薬剤誘発性の白斑に有効であることを報告しており、その臨床応用に向けた研究を行っています。併せて、色素細胞や動物モデル、患者さんのサンプルを用いた研究により、白斑の病態解明と新規治療法の開発に取り組んでいます。
膠原病外来
ほとんどの膠原病は皮膚に症状を呈します。このため、膠原病の患者さんが最初になんらかの異常を自覚したとき、最初の受診科として皮膚科を受診することが非常に多くなります。膠原病は、皮膚と同時に内臓の様々な臓器に多彩な症状を呈し、当膠原病外来ではリウマチ内科や他の内科診療科と連携しながら、幅広い膠原病の患者さんの診療にあたっています。特に、皮膚や各種の内臓臓器の線維化を特徴とする全身性強皮症の診療には力を入れていて、宮城県内外を含め全国から患者さんが多数通院されており、現時点(2024年8月現在)で300名程度の患者さんが当科の膠原病専門外来に通院しています。
また、現在当科が厚生労働省の全身性強皮症の研究班を先導する施設となっています。外来診療のほか、入院治療においても、抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブや抗CD20抗体であるリツキシマブなどの生物学的製剤なども使用し、間質性肺疾患等の全身合併症を伴う患者さんの治療も多数の症例でおこなっています。また、患者さんの臨床検体を用いたsingle cell RNA-seqによる解析や、新規遺伝子改変マウスなども作出してマウスを用いた基礎病態研究、さらにキャピラロスコピーやAIなどを用いた臨床研究も精力的に進めています。また、医師主導自主臨床試験などの新規治験も積極的に実施しており、膠原病の患者さんに常に最新の治療を提供できるように日々努力しております。
レーザー外来
レーザー外来では、色素沈着症、血管性病変に対して外来、入院でレーザー治療を行っています。色素沈着症に対するQスイッチアレキサンドライトレーザー、血管性病変に対するパルス色素レーザーがありますので、生後間もない赤ちゃんから成人まで幅広い年齢層の患者さんが通院されています。特に、小児の患者さんが多く、長期間経過をフォローしますので、お子さんの成長も感じながら日々診療しています。整容的な問題にアプローチするケースが多く、ご本人ご家族とみんなで相談しながら治療方針を決定しているのも、レーザー外来の特徴です。また、治療効果が目に見えてわかるので、患者さんと一緒に喜びを分かちあうことができるのも、レーザー外来の醍醐味の一つかもしれません。レーザー治療は、年々進化し、副作用が少なく効果も高い機器が開発され、今後さらに注目される分野です。当科は、レーザー治療の原理や機器の性能を理解して、患者さんの病変毎に治療方針を組み立てて行くことをモットーとしています。